DevSecOps最新トレンド:日本の企業が取り組むべき対策とは?

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DevSecOps(デブセックオプス)は、開発(Development)、セキュリティ(Security)、運用(Operations)を統合し、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通してセキュリティを組み込むアプローチです。近年、サイバー攻撃の高度化と頻発化、そしてクラウドネイティブ技術の普及に伴い、DevSecOpsの重要性はますます高まっています。本記事では、日本の企業が取り組むべきDevSecOpsの最新トレンドとその対策について、中立的な視点から解説します。

サプライチェーン攻撃対策の強化:SBOM活用と脆弱性スキャン自動化

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ソフトウェアサプライチェーン攻撃は、ソフトウェア開発の過程で利用する外部のコンポーネントやライブラリの脆弱性を悪用するものです。このリスクに対抗するため、SBOM(Software Bill of Materials:ソフトウェア部品表)の導入が不可欠となっています。SBOMは、ソフトウェアを構成するすべてのコンポーネントとそのバージョン情報をリスト化したもので、脆弱性の特定と影響範囲の特定を迅速化します。

SBOM導入のポイント

* **自動生成ツールの導入:** SBOMを自動生成するツールを導入することで、手動での作成・管理の手間を省き、常に最新の状態を維持できます。
* **標準フォーマットの採用:** SPDX、CycloneDXなど、標準的なフォーマットでSBOMを作成することで、ツール間の互換性を確保し、情報共有を円滑にします。
* **脆弱性スキャンとの連携:** 生成したSBOMを脆弱性スキャンツールと連携させることで、早期に脆弱性を発見し、対応を迅速化します。

国内企業におけるSBOMの活用事例としては、金融機関におけるOSSの利用状況把握や、製造業における組み込みソフトウェアのセキュリティ強化などが挙げられます。

クラウドネイティブセキュリティの進化:CNAPPとIaCセキュリティ

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Photo by Tianshu Liu on Unsplash

コンテナ、Kubernetes、マイクロサービスといったクラウドネイティブ環境では、従来のセキュリティ対策だけでは不十分です。CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)は、クラウドネイティブ環境全体を保護するための統合的なソリューションを提供します。また、IaC(Infrastructure as Code)のセキュリティ強化も重要です。

CNAPP導入の検討

* **可視性の向上:** CNAPPは、クラウドネイティブ環境全体の可視性を向上させ、セキュリティリスクを早期に特定します。
* **脅威検知と対応:** 異常な挙動を検知し、自動的に対応する機能を提供します。
* **コンプライアンス遵守:** クラウド環境におけるコンプライアンス要件への準拠を支援します。

IaCのセキュリティ強化

* **セキュリティポリシーのコード化:** IaCにセキュリティポリシーを組み込むことで、インフラストラクチャの構成段階からセキュリティを確保します。
* **静的解析ツールの導入:** IaCコードの脆弱性を静的に解析するツールを導入し、デプロイ前にリスクを特定します。
* **変更管理の徹底:** IaCコードの変更管理を徹底し、不正な変更や設定ミスを防ぎます。

AI/MLを活用したDevSecOps自動化:誤検知削減とエンジニアの負担軽減

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Photo by Sora Sagano on Unsplash

AI/ML(人工知能/機械学習)は、セキュリティ分析、脅威検知、脆弱性管理など、DevSecOpsのさまざまな領域で自動化を推進します。AI/MLを活用することで、誤検知を削減し、セキュリティエンジニアの負担を軽減できます。

AI/ML活用事例

* **脆弱性優先度付け:** 脆弱性の重要度をAI/MLで判断し、対応の優先順位を最適化します。
* **脅威インテリジェンス:** AI/MLを活用して脅威インテリジェンスを分析し、新たな攻撃パターンを予測します。
* **異常検知:** ネットワークトラフィックやシステムログをAI/MLで分析し、異常な挙動を検知します。

PoCの進め方

1. **課題の明確化:** 自動化によって解決したい課題を明確にします。
2. **データ収集:** AI/MLの学習に必要なデータを収集します。
3. **モデル構築:** 収集したデータに基づいてAI/MLモデルを構築します。
4. **評価と改善:** 構築したモデルの性能を評価し、改善を繰り返します。

開発者のセキュリティスキル向上と組織文化の醸成:シフトレフトの実現

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Photo by Jezael Melgoza on Unsplash

DevSecOpsを成功させるためには、開発者へのセキュリティトレーニングの強化と、セキュリティを意識した組織文化の醸成が不可欠です。セキュリティを「シフトレフト」することで、開発の初期段階からセキュリティを考慮し、後工程での手戻りを削減できます。

研修プログラムの紹介

* **セキュリティ基礎研修:** OWASP Top 10など、Webアプリケーションの脆弱性に関する基礎知識を習得します。
* **セキュアコーディング研修:** 安全なコードの書き方や、脆弱性を埋め込まないためのコーディング規約を学びます。
* **脅威モデリング研修:** アプリケーションに対する攻撃シナリオを想定し、セキュリティ対策を検討するスキルを習得します。

DevSecOps推進における組織体制

* **DevSecOpsチームの設置:** 開発、セキュリティ、運用のメンバーから構成されるDevSecOpsチームを設置し、連携を強化します。
* **セキュリティチャンピオンの育成:** 各開発チームにセキュリティチャンピオンを配置し、チーム全体のセキュリティ意識を高めます。
* **セキュリティに関する情報共有:** セキュリティに関する情報を共有する仕組みを構築し、チーム全体で知識を共有します。

法規制・ガイドラインへの対応とコンプライアンス強化

国内外の法規制やガイドラインへの対応は、企業にとって重要な課題です。個人情報保護法、GDPR、NISTサイバーセキュリティフレームワークなど、関連する法規制やガイドラインを理解し、遵守する必要があります。

主な法規制・ガイドライン

* **個人情報保護法:** 個人情報の取得、利用、管理に関する規制です。
* **GDPR(General Data Protection Regulation):** EU域内の個人情報保護に関する規制です。
* **NISTサイバーセキュリティフレームワーク:** サイバーセキュリティリスクを管理するためのフレームワークです。

コンプライアンス強化のためには、定期的なリスクアセスメントの実施、セキュリティポリシーの策定、従業員への教育などが重要です。

まとめ

DevSecOpsは、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通してセキュリティを組み込むための重要なアプローチです。本記事で解説したトレンドを踏まえ、SBOMの活用、クラウドネイティブセキュリティの強化、AI/MLによる自動化、開発者のスキル向上、法規制への対応など、自社の状況に合わせて適切な対策を講じることで、より安全で信頼性の高いソフトウェア開発を実現できます。積極的にDevSecOpsを導入し、変化し続けるサイバーセキュリティリスクに対応していきましょう。

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