インターネット利用に欠かせないパスワード。しかし、その管理の煩雑さやセキュリティリスクから解放される「パスワードレス認証」が、今、大きな注目を集めています。本記事では、最新トレンドを踏まえ、日本企業がパスワードレス認証を導入する際のポイントや課題を中立的な視点で解説します。
FIDO2/WebAuthnの普及と課題

FIDO2/WebAuthnは、公開鍵暗号方式を利用した、より安全なパスワードレス認証技術です。近年、導入事例が増加していますが、導入にあたってはいくつかの課題も存在します。
デバイス対応状況の確認
FIDO2認証を利用するためには、対応するデバイス(スマートフォン、PC、セキュリティキーなど)が必要です。従業員が利用するデバイスがFIDO2に対応しているかを確認し、必要に応じて対応デバイスの導入を検討する必要があります。
ユーザー体験の最適化
パスワードレス認証の導入は、ユーザー体験の向上に繋がりますが、初期設定や利用方法の説明を丁寧に行う必要があります。分かりやすいマニュアルの作成や、サポート体制の構築が重要です。
ベンダーロックインのリスク軽減策
特定のベンダーに依存してしまう「ベンダーロックイン」のリスクを避けるため、オープンスタンダードなFIDO2を採用する、複数のベンダーのソリューションを比較検討するなど、リスク軽減策を講じることが重要です。
生体認証の進化とプライバシー保護

顔認証や指紋認証などの生体認証は、パスワードレス認証の有力な選択肢の一つです。認証精度の向上とともに、プライバシー保護に関する技術も進化しています。
なりすまし対策の強化
生体認証の精度向上により、なりすまし対策は強化されています。しかし、完全にリスクを排除できるわけではありません。多要素認証との組み合わせや、認証時の状況を分析するリスクベース認証などを活用することで、更なるセキュリティ強化が可能です。
プライバシー保護技術の進展
生体情報のプライバシー保護のため、差分プライバシーや連合学習といった技術が注目されています。これらの技術を活用することで、生体情報を暗号化したまま認証処理を行うことが可能になり、プライバシーリスクを低減できます。
パスキー(Passkeys)の登場と影響

Apple、Google、Microsoftといった大手IT企業が推進する「パスキー」は、従来のパスワードレス認証をさらに進化させた技術です。
パスキーの仕組みと従来のパスワードレス認証との違い
パスキーは、デバイスに保存された暗号鍵を利用して認証を行う仕組みです。従来のパスワードレス認証と同様に、パスワードの入力は不要ですが、デバイス間の同期やリカバリーがより容易になっています。
ユーザーへのメリットと企業側の導入戦略
ユーザーは、パスワードを覚える必要がなくなり、より安全かつスムーズにサービスを利用できます。企業側は、パスワード管理コストの削減や、セキュリティリスクの低減が期待できます。導入にあたっては、パスキーに対応したサービスを段階的に導入していくことが効果的です。
多要素認証(MFA)との連携強化

パスワードレス認証は、単独で使用するだけでなく、多要素認証(MFA)と連携することで、セキュリティレベルをさらに向上させることができます。
リスクベース認証(RBA)やデバイス認証の活用
リスクベース認証(RBA)は、ユーザーの行動パターンやデバイス情報などを分析し、リスクが高いと判断された場合にのみ、追加の認証を要求する仕組みです。デバイス認証は、ユーザーが利用するデバイスを事前に登録し、未登録のデバイスからのアクセスを制限する仕組みです。これらの技術を組み合わせることで、利便性を損なうことなく、セキュリティを強化できます。
エンタープライズ環境におけるパスワードレス認証の導入戦略
大規模組織でパスワードレス認証を導入するには、綿密な計画と段階的なアプローチが必要です。
既存システムとの連携と従業員教育
既存の認証システムとの連携や、従業員への十分な教育は不可欠です。段階的な導入計画を立て、まずは一部の部門やサービスから試験的に導入し、効果を検証しながら範囲を拡大していくことが推奨されます。
段階的な導入アプローチと成功事例の紹介
成功事例を参考に、自社の状況に合わせた導入戦略を策定することが重要です。例えば、まずは社内システムからパスワードレス認証を導入し、段階的に顧客向けサービスに拡大していく、といったアプローチが考えられます。
まとめ
パスワードレス認証は、セキュリティ強化と利便性向上を両立する、これからの認証方式の主流となる可能性を秘めています。本記事で紹介した最新動向や導入戦略を参考に、自社に最適なパスワードレス認証の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
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