「データ主権」とは?日本企業が知っておくべき重要トレンドと対策

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Photo by Su San Lee on Unsplash

近年、企業を取り巻くデータ環境は大きく変化しています。個人情報保護法の改正、グローバルサプライチェーンの複雑化、クラウドサービスの普及など、データを取り扱う上での課題は増え続けています。その中で注目されているのが「データ主権」という考え方です。本記事では、データ主権の重要性と、日本企業が知っておくべきトレンド、そして具体的な対策について解説します。

改正個人情報保護法と越境移転規制の強化

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Photo by Lin Mei on Unsplash

改正個人情報保護法により、EU GDPR水準のデータ移転規制が導入され、個人データを国外に移転する際の要件が厳格化されました。企業は、移転先国における個人情報保護体制を確認する義務を負い、十分な保護措置が講じられていることを確認する必要があります。

企業が取るべき対応

* **移転先国の法規制調査:** 個人データを移転する予定の国・地域の個人情報保護法制を詳細に調査し、日本の個人情報保護法と同等レベルの保護が確保されているか確認します。
* **契約による保護措置:** 移転先との間で、適切なデータ保護契約を締結し、個人データの安全管理措置、漏えい時の対応などを明確化します。
* **同意取得の徹底:** 個人データの移転について、本人から明確な同意を得る必要があります。同意を得る際には、移転先、利用目的、移転先での保護措置などを具体的に説明することが重要です。

グローバル展開を進める企業にとって、データ主権を意識したデータ移転戦略は不可欠です。

サプライチェーンにおけるデータ主権の確保

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Photo by Tianshu Liu on Unsplash

サプライチェーン全体でデータの流れを把握し、機密情報や個人情報が意図しない国や企業に移転されないようにするための対策が求められています。特に中小企業を含むサプライチェーン全体のセキュリティ意識向上が重要です。

サプライチェーン全体でのセキュリティ対策

* **サプライヤーへのセキュリティ監査:** 定期的にサプライヤーのセキュリティ体制を監査し、情報セキュリティに関するリスクを評価します。
* **情報セキュリティ教育の実施:** サプライチェーン全体で情報セキュリティに関する教育を実施し、従業員のセキュリティ意識を高めます。
* **データ共有ルールの明確化:** サプライチェーン内で共有するデータの種類、範囲、利用目的、保護措置などを明確に定義し、関係者間で共有します。

サプライチェーン全体でデータ主権を意識した取り組みを進めることで、情報漏えいリスクを低減し、事業継続性を高めることができます。

クラウドサービスの利用とデータ所在地

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Photo by Sora Sagano on Unsplash

クラウドサービスの利用拡大に伴い、データの物理的な保管場所や処理場所が重要視されています。国内リージョンを持つクラウドサービスの選択や、データ暗号化、アクセス制御などの技術的対策によるデータ主権の確保が求められます。

クラウドサービス選定のポイント

* **国内リージョンの有無:** データ保管場所を国内に限定できる国内リージョンを持つクラウドサービスを選択します。
* **データ暗号化:** 保存時および転送時のデータ暗号化を徹底し、不正アクセスからデータを保護します。
* **アクセス制御:** 厳格なアクセス制御を実施し、権限のないユーザーによるデータへのアクセスを防止します。

クラウドサービスを利用する際には、データ所在地やセキュリティ対策を十分に検討し、データ主権を確保することが重要です。

データ主権を考慮したAI/MLモデルの開発・運用

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Photo by Jezael Melgoza on Unsplash

AI/MLモデルの学習データや推論結果が、データ主権の制約を受ける可能性があります。国内データを利用したAIモデルの開発や、連合学習(Federated Learning)などデータ分散型の学習手法の活用が有効です。

AI開発におけるデータ主権対策

* **国内データ利用の推進:** 国内で収集されたデータのみを使用してAIモデルを開発します。
* **連合学習の活用:** 複数の組織がデータを共有せずにAIモデルを共同で学習する連合学習を活用します。
* **差分プライバシーの適用:** データにノイズを加えることで、個々のデータポイントを特定できないようにする差分プライバシーを適用します。

AI開発においても、データ主権を意識した取り組みを進めることで、法規制を遵守し、倫理的なAI開発を実現することができます。

政府機関・自治体におけるデータ主権への意識の高まり

政府機関や自治体が、クラウドサービスの利用やデータ連携において、データ主権を重視する姿勢を明確化しています。政府調達におけるセキュリティ要件の厳格化も進んでいます。

政府調達におけるデータ主権要件

* **国内データ保管の義務化:** 政府機関が利用するクラウドサービスにおいて、データの国内保管を義務付ける動きがあります。
* **セキュリティ認証の取得:** クラウドサービス事業者に対して、一定のセキュリティ認証の取得を求める場合があります。
* **データ監査の実施:** 政府機関がクラウドサービス事業者のデータ保護体制を監査する場合があります。

政府機関や自治体との取引においては、データ主権に関する要件を十分に理解し、対応する必要があります。

まとめ

データ主権は、企業がグローバルに事業を展開する上で避けて通れない重要な課題です。個人情報保護法の改正、サプライチェーンの複雑化、クラウドサービスの普及など、データを取り巻く環境は常に変化しており、企業はこれらの変化に対応していく必要があります。本記事で紹介したトレンドと対策を参考に、自社のビジネスモデルやデータ戦略を見直し、データ主権を確保するための取り組みを進めていきましょう。

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