IoT(Internet of Things)デバイスは私たちの生活やビジネスに浸透し、利便性向上に大きく貢献しています。しかし、その一方で、IoTデバイスを狙ったサイバー攻撃は高度化・巧妙化の一途をたどっており、企業にとって喫緊の課題となっています。本記事では、最新のIoTセキュリティトレンドを踏まえ、企業が今すぐ取り組むべき対策を5つのポイントに絞って解説します。
サプライチェーン攻撃の深刻化と対策

近年、IoTデバイスのサプライチェーンを狙った攻撃が深刻化しています。製造段階や流通経路において、ファームウェアが改ざんされたり、マルウェアが感染させられたりする事例が後を絶ちません。これらの攻撃は、企業ネットワーク全体に影響を及ぼす可能性があり、甚大な被害をもたらす可能性があります。
SBOM(ソフトウェア部品表)の活用
サプライチェーン攻撃への対策として、SBOM(Software Bill of Materials:ソフトウェア部品表)の活用が重要です。SBOMは、ソフトウェアに含まれるコンポーネント、ライブラリ、依存関係などを一覧化したもので、脆弱性の特定やリスク評価に役立ちます。SBOMを活用することで、自社が利用しているIoTデバイスの構成要素を把握し、脆弱性情報を迅速に確認することができます。
サプライヤーリスク管理の徹底
サプライヤーリスク管理も重要な対策の一つです。IoTデバイスの製造業者や流通業者を選定する際には、セキュリティ対策の状況を十分に評価する必要があります。サプライヤーに対して定期的な監査を実施し、セキュリティ基準の遵守状況を確認することも重要です。
ゼロトラストアーキテクチャのIoT環境への適用

従来の境界防御型セキュリティは、ネットワークの内側を信頼するという前提に立っていました。しかし、IoTデバイスの普及により、ネットワーク境界が曖昧になり、境界防御だけでは十分なセキュリティを確保できなくなっています。そこで注目されているのが、ゼロトラストアーキテクチャです。
マイクロセグメンテーションの実装
ゼロトラストアーキテクチャでは、ネットワーク上の全てのデバイス、ユーザー、データを信頼せず、常に検証を行います。IoT環境においては、マイクロセグメンテーションと呼ばれる手法が有効です。これは、ネットワークを細かく分割し、デバイスごとにアクセス権限を厳密に制御することで、攻撃範囲を限定するものです。
デバイス認証の強化
デバイス認証の強化も重要です。IoTデバイスがネットワークに接続する際に、IDとパスワードだけでなく、多要素認証やデバイス証明書などを利用することで、なりすましを防ぐことができます。
IoTセキュリティ法規制の進化と企業の対応

IoTセキュリティに関する法規制は、国内外で強化される傾向にあります。日本国内では、改正個人情報保護法やサイバーセキュリティ基本法などが関連法規制として挙げられます。
法規制の遵守と罰則
企業は、これらの法規制を遵守し、個人情報保護やセキュリティ対策を徹底する必要があります。法規制に違反した場合、罰金や業務停止命令などの厳しい処分が科される可能性があります。
最新動向の把握と対応策の実施
企業は、IoTセキュリティ関連法規制の最新動向を常に把握し、必要に応じてセキュリティ対策を見直す必要があります。ガイドラインや業界標準などを参考に、適切な対応策を実施することが重要です。
AI/MLを活用したIoTセキュリティ対策の高度化

AI(人工知能)やML(機械学習)技術は、IoTセキュリティ対策を高度化する上で大きな可能性を秘めています。
異常検知による早期発見
AI/MLを活用することで、IoTデバイスの異常な動作やネットワークトラフィックを検知し、早期に脅威を特定することができます。従来のルールベースの検知方法では見逃してしまうような、未知の攻撃を検知することも可能です。
脆弱性診断の自動化
AI/MLは、IoTデバイスの脆弱性診断を自動化する上でも役立ちます。脆弱性スキャンツールと連携することで、大量のIoTデバイスの脆弱性を効率的に診断し、対策を講じることができます。
脅威インテリジェンスの活用
AI/MLを活用した脅威インテリジェンスは、最新の脅威情報を収集・分析し、IoTデバイスに対する攻撃を予測・防御する上で有効です。
エッジコンピューティング環境におけるセキュリティ確保
IoTデバイスに近い場所でデータ処理を行うエッジコンピューティングの普及に伴い、新たなセキュリティ課題が浮上しています。
物理セキュリティの強化
エッジコンピューティング環境は、データセンターのような厳重なセキュリティ対策が施されていない場所に設置されることが多いため、物理的なセキュリティ対策が重要になります。不正アクセスや盗難を防ぐために、監視カメラや入退室管理システムなどを導入する必要があります。
データ保護とアクセス制御
エッジコンピューティング環境で処理されるデータは、機密性の高い情報を含む可能性があります。データの暗号化やアクセス制御を徹底し、不正なアクセスや情報漏洩を防ぐ必要があります。
セキュアなリモート管理
エッジコンピューティング環境は、リモートで管理されることが多いため、セキュアなリモート管理体制を構築する必要があります。VPNや多要素認証などを利用し、不正なアクセスを防ぐ必要があります。
まとめ
IoTセキュリティは、企業にとって避けて通れない重要な課題です。サプライチェーン攻撃、ゼロトラストアーキテクチャ、法規制、AI/ML、エッジコンピューティングなど、様々なトレンドを踏まえ、自社の環境に最適な対策を講じる必要があります。本記事で紹介した5つのポイントを参考に、IoTセキュリティ対策を強化し、安全なIoT環境を構築してください。
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