DevSecOps最前線:2024年以降のトレンドと日本企業が取り組むべき課題

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DevSecOps(デブセックオプス)は、開発(Development)、セキュリティ(Security)、運用(Operations)を統合し、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通してセキュリティを組み込むアプローチです。近年のソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加やクラウドネイティブ環境の普及に伴い、DevSecOpsの重要性はますます高まっています。本記事では、2024年以降のDevSecOpsの主要トレンドを解説し、日本企業が取り組むべき課題について考察します。

サプライチェーンセキュリティの強化:SBOMと脆弱性スキャンの自動化

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Photo by Tianshu Liu on Unsplash

ソフトウェアサプライチェーン攻撃は、組織が直接制御できないサードパーティのソフトウェアやコンポーネントを悪用する手口です。これを防ぐためには、ソフトウェア部品表(SBOM: Software Bill of Materials)の導入が不可欠です。SBOMは、ソフトウェアを構成するすべてのコンポーネント、ライブラリ、依存関係を一覧化したもので、脆弱性の特定と管理を容易にします。

SBOM管理ツールの活用

SBOMを効果的に管理するためには、専用の管理ツールが有効です。これらのツールは、SBOMの生成、保管、共有、脆弱性情報の追跡を自動化し、サプライチェーン全体のリスクを可視化します。

サプライチェーンリスク評価サービスの利用

SBOMだけでは、サプライチェーン全体のリスクを十分に把握することはできません。サプライチェーンリスク評価サービスを利用することで、サードパーティのセキュリティ体制や脆弱性対応状況を評価し、より包括的なリスク管理を実現できます。脆弱性スキャンの自動化と組み合わせることで、より迅速かつ効果的な対応が可能になります。

クラウドネイティブセキュリティの進化:CNAPPとIaCセキュリティ

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Photo by Su San Lee on Unsplash

コンテナ、Kubernetes、サーバレスといったクラウドネイティブ環境は、従来のセキュリティ対策では十分に対応できない新たな脅威をもたらします。そのため、クラウドネイティブ環境に特化したセキュリティ対策が求められます。

CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)の導入

CNAPPは、クラウドネイティブアプリケーションのセキュリティを一元的に管理するためのプラットフォームです。脆弱性スキャン、コンテナイメージのスキャン、ランタイム保護、ネットワークセキュリティなど、複数のセキュリティ機能を統合し、クラウドネイティブ環境全体を保護します。

IaC(Infrastructure as Code)のセキュリティチェック自動化

IaCは、インフラストラクチャをコードとして定義し、自動的にプロビジョニングする手法です。IaCのセキュリティチェックを自動化することで、構成ミスによるセキュリティリスクを早期に発見し、修正することができます。例えば、AWS CloudFormationやTerraformなどのIaCツールに対して、セキュリティルールを定義し、違反がないか自動的にチェックする仕組みを導入します。

AI/MLを活用したDevSecOpsの自動化:脆弱性トリアージと異常検知

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Photo by Sora Sagano on Unsplash

AI/MLは、DevSecOpsの効率化に大きく貢献します。脆弱性スキャン結果のトリアージ、異常検知、インシデントレスポンスの自動化など、さまざまな分野で活用されています。

脆弱性スキャン結果のトリアージ自動化

脆弱性スキャンツールは、大量の脆弱性情報を出力しますが、そのすべてが緊急性の高いものとは限りません。AI/MLを活用することで、脆弱性の重要度を自動的に判断し、優先順位をつけることができます。これにより、セキュリティ担当者はより重要な脆弱性に対応する時間を確保できます。

異常検知とインシデントレスポンスの自動化

AI/MLは、アプリケーションやシステムの異常な挙動を検知し、自動的にインシデントレスポンスを開始することができます。例えば、異常なトラフィックパターンや、不正なAPIアクセスなどを検知し、自動的にアラートを生成したり、隔離措置を実行したりすることができます。

AI/ML導入における注意点

AI/MLをDevSecOpsに導入する際には、いくつかの注意点があります。データバイアス、説明可能性、モデルの精度など、考慮すべき要素は多岐にわたります。特に、データバイアスは、AI/MLの判断に偏りを生じさせ、不公平な結果につながる可能性があります。また、説明可能性は、AI/MLの判断根拠を理解し、検証するために重要です。

DevSecOps人材育成と組織文化の醸成:トレーニングとセキュリティチャンピオン制度

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Photo by Lin Mei on Unsplash

DevSecOpsを成功させるためには、セキュリティ専門家だけでなく、開発者や運用担当者もセキュリティ意識を持つ必要があります。そのため、DevSecOps人材育成と組織文化の醸成が不可欠です。

DevSecOpsトレーニングプログラムの実施

DevSecOpsトレーニングプログラムを実施することで、開発者、運用担当者、セキュリティ担当者がDevSecOpsの基本原則や実践方法を学ぶことができます。トレーニングの内容は、脆弱性診断、セキュリティコーディング、インシデントレスポンスなど、多岐にわたります。

セキュリティチャンピオン制度の導入

セキュリティチャンピオン制度は、各チームからセキュリティに関心のあるメンバーを選出し、セキュリティに関する知識やスキルを習得させ、チーム内のセキュリティ意識向上を促進する制度です。セキュリティチャンピオンは、チーム内のセキュリティに関する質問に対応したり、セキュリティに関するベストプラクティスを共有したりする役割を担います。

ゲーム形式でのセキュリティ学習

セキュリティに関する知識を楽しく学ぶために、ゲーム形式でのセキュリティ学習を取り入れることも有効です。例えば、CTF(Capture the Flag)のようなセキュリティコンテストや、セキュリティに関するクイズなどを実施することで、参加者のモチベーションを高め、学習効果を高めることができます。

DevSecOpsパイプラインの可視化とメトリクスの重要性

DevSecOpsパイプラインを可視化し、メトリクスを計測することで、DevSecOpsの運用状況を把握し、改善することができます。

パイプラインの可視化

CI/CDパイプラインにセキュリティチェックを組み込み、その結果を可視化することで、開発チームはセキュリティの問題を早期に発見し、修正することができます。例えば、脆弱性スキャン、静的解析、動的解析の結果を、パイプライン上で確認できるようにします。

メトリクスの計測

DevSecOpsの運用状況を把握するために、以下のメトリクスを計測することが重要です。

* 脆弱性の発見数
* 脆弱性の修正時間
* セキュリティインシデントの発生件数
* セキュリティに関するトレーニングの受講率

これらのメトリクスを定期的にモニタリングし、改善活動を行うことで、DevSecOpsの成熟度を高めることができます。

まとめ:DevSecOpsの進化と日本企業が目指すべき方向性

DevSecOpsは、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を通してセキュリティを組み込むための重要なアプローチです。サプライチェーンセキュリティの強化、クラウドネイティブセキュリティの進化、AI/MLを活用した自動化、人材育成と組織文化の醸成、パイプラインの可視化とメトリクスの重要性といったトレンドを踏まえ、日本企業は自社の状況に合わせたDevSecOps戦略を策定し、実践していく必要があります。これらの取り組みを通じて、より安全で信頼性の高いソフトウェアを迅速に開発し、提供することが可能になります。

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