DevSecOpsは、開発の初期段階からセキュリティを組み込むことで、ソフトウェア開発ライフサイクル全体を安全にするためのアプローチです。近年、ソフトウェア開発を取り巻く環境は急速に変化しており、DevSecOpsも進化を続けています。本記事では、日本のソフトウェア開発者が2024年に注目すべきDevSecOpsの5つのトレンドについて、中立的な視点から詳しく解説します。
サプライチェーンセキュリティの強化:SBOMと脆弱性管理の自動化

ソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加は、組織にとって深刻な脅威となっています。攻撃者は、サードパーティのコンポーネントやライブラリの脆弱性を悪用し、システムに侵入します。この脅威に対抗するため、SBOM(Software Bill of Materials)の導入と脆弱性管理の自動化が不可欠です。
SBOMは、ソフトウェアを構成するコンポーネントの一覧表です。SBOMを活用することで、自社が使用しているコンポーネントに脆弱性が発見された場合に、迅速かつ正確に影響範囲を特定できます。
脆弱性管理の自動化は、SBOMと連携し、脆弱性の検出、トリアージ、修正を自動化するプロセスです。これにより、手動での脆弱性管理にかかる時間と労力を削減し、セキュリティ担当者の負担を軽減できます。
サプライチェーンリスク評価ツールの活用
サプライチェーン全体のリスクを評価するために、専用のツールを活用することが有効です。これらのツールは、サプライチェーンの各段階におけるセキュリティリスクを可視化し、優先順位付けを支援します。
クラウドネイティブセキュリティの進化:CNAPPとコンテナセキュリティ

Kubernetesやコンテナ技術の普及に伴い、クラウドネイティブなアプリケーションの開発と運用が一般的になりました。しかし、これらの技術は従来のセキュリティ対策ではカバーしきれない新たなセキュリティリスクを生み出しています。
CNAPP(Cloud Native Application Protection Platform)は、これらのリスクに対応するために設計された統合的なセキュリティソリューションです。CNAPPは、コンテナイメージのスキャン、ランタイム保護、ネットワークセキュリティなど、クラウドネイティブ環境全体を保護するための機能を提供します。
DevSecOpsパイプラインへのCNAPP統合
CNAPPをDevSecOpsパイプラインに統合することで、開発の初期段階からセキュリティを組み込むことが可能です。例えば、コンテナイメージのスキャンをCI/CDパイプラインに組み込むことで、脆弱性のあるイメージが本番環境にデプロイされるのを防ぐことができます。
AI/MLを活用したセキュリティ自動化:コードレビューと脅威インテリジェンス

AI/ML(人工知能/機械学習)の進化は、セキュリティの世界にも大きな変革をもたらしています。AI/MLを活用することで、脆弱性診断や異常検知などのセキュリティタスクを自動化し、効率性と精度を向上させることができます。
AIによるコードレビューは、人間が見落としがちなセキュリティ上の欠陥を検出するのに役立ちます。また、AIを活用した脅威インテリジェンスは、最新の脅威情報を収集・分析し、攻撃を予測・防御するのに役立ちます。
DevSecOpsチームにおけるAI/ML導入のベストプラクティス
AI/MLをDevSecOpsチームに導入する際には、明確な目標を設定し、適切なデータとモデルを選択することが重要です。また、AI/MLの導入は、既存のセキュリティプロセスを置き換えるものではなく、補完するものとして捉えるべきです。
Infrastructure as Code (IaC) セキュリティの徹底:スキャンとポリシーのコード化

Infrastructure as Code (IaC) は、インフラストラクチャをコードとして記述し、自動化された方法でプロビジョニングおよび管理する手法です。IaCは、インフラストラクチャの管理を効率化する一方で、設定ミスによるセキュリティリスクを増大させる可能性もあります。
IaCスキャンツールを導入することで、コード内のセキュリティ上の欠陥を検出できます。また、セキュリティポリシーをコード化することで、インフラストラクチャの設定が常にセキュリティ基準に準拠していることを保証できます。
継続的なコンプライアンスチェックの重要性
IaC環境におけるセキュリティを維持するためには、継続的なコンプライアンスチェックが不可欠です。これにより、設定の変更がセキュリティポリシーに違反していないか、常に監視することができます。
シフトレフトセキュリティの進化と開発者教育:早期段階からのセキュリティ組み込み
シフトレフトセキュリティは、セキュリティを開発ライフサイクルのより早い段階に組み込むという概念です。これにより、後工程で発見されるセキュリティ上の問題を減らし、開発コストを削減することができます。
シフトレフトを実現するためには、開発者に対するセキュリティ教育が不可欠です。開発者は、セキュリティの基礎知識を習得し、安全なコーディングプラクティスを実践する必要があります。
開発者教育の重要性
開発者がセキュリティを理解し、自らセキュリティを意識した開発を行うことで、より安全なソフトウェアを開発することができます。継続的な教育とトレーニングを通じて、開発者のセキュリティ意識を高めることが重要です。
まとめ
DevSecOpsは、常に進化を続ける分野です。サプライチェーンセキュリティの強化、クラウドネイティブセキュリティの進化、AI/MLを活用したセキュリティ自動化、IaCセキュリティの徹底、そしてシフトレフトセキュリティの進化と開発者教育は、2024年に日本のソフトウェア開発者が特に注目すべきトレンドです。これらのトレンドを理解し、適切に対応することで、より安全で信頼性の高いソフトウェアを開発することができます。
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