DevSecOpsは、開発の初期段階からセキュリティを組み込むことで、迅速かつ安全なソフトウェア開発を実現するアプローチです。近年、ソフトウェアサプライチェーン攻撃の増加やクラウド環境の複雑化など、新たな脅威が顕在化しており、DevSecOpsの重要性はますます高まっています。本記事では、日本の開発現場が直面する課題を踏まえ、DevSecOpsにおける最新のトレンドを5つご紹介します。
サプライチェーンセキュリティの強化

ソフトウェアサプライチェーン攻撃は、もはや他人事ではありません。攻撃者は、オープンソースライブラリやサードパーティ製コンポーネントの脆弱性を悪用し、組織のシステムに侵入を試みます。
SBOM(ソフトウェア部品表)の活用
SBOMは、ソフトウェアを構成する部品(コンポーネント)の一覧表です。SBOMを活用することで、使用しているコンポーネントの脆弱性を把握し、迅速な対応が可能になります。SBOMの生成・管理ツールを導入し、サプライチェーン全体で可視性を高めることが重要です。
サードパーティ製コンポーネントの脆弱性管理の自動化
手動での脆弱性管理は限界があります。脆弱性スキャンツールや、ソフトウェア組成分析(SCA)ツールを導入し、サードパーティ製コンポーネントの脆弱性を自動的に検出し、優先順位付けすることが重要です。検出された脆弱性に対する修正プロセスを自動化することで、迅速なリスク軽減が可能になります。
Infrastructure as Code (IaC) セキュリティの深化

クラウド環境の普及に伴い、IaCを活用したインフラ構築が一般的になりました。しかし、IaCの設定ミスは、重大なセキュリティリスクにつながる可能性があります。
IaCスキャンツールの導入
IaCの設定ファイル(Terraform、CloudFormationなど)をスキャンし、セキュリティ上の問題点を検出するツールを導入しましょう。早期に設定ミスを発見し、修正することで、クラウド環境全体のリスクを低減できます。
ポリシーアズコードによる自動化されたガバナンス
セキュリティポリシーをコードとして定義し、IaCのデプロイメントプロセスに組み込むことで、自動化されたガバナンスを実現できます。これにより、ポリシー違反を未然に防ぎ、一貫性のあるセキュリティ対策を適用できます。
シフトレフトによる早期の脆弱性検知
IaCの脆弱性対策も、開発の初期段階(シフトレフト)で実施することが重要です。開発者がコードを作成する段階で脆弱性を検出し、修正することで、後工程での手戻りを減らし、効率的な開発を実現できます。
AI/MLを活用したセキュリティ自動化

AI/MLは、セキュリティ運用の効率化と脅威への迅速な対応に貢献します。
機械学習を活用した脆弱性スキャン
従来の脆弱性スキャンツールでは検出が難しい、未知の脆弱性や異常な動作を、機械学習を活用して検出できます。これにより、より網羅的な脆弱性対策が可能になります。
異常検知とインシデント対応の自動化
AI/MLを活用して、ネットワークトラフィックやシステムログの異常を検知し、自動的にインシデント対応を行うことができます。これにより、セキュリティ担当者の負担を軽減し、迅速な対応を実現できます。
DevSecOpsパイプラインへのAI/ML統合
脆弱性スキャン、異常検知、インシデント対応などのAI/ML機能をDevSecOpsパイプラインに統合することで、開発ライフサイクル全体で自動化されたセキュリティ運用を実現できます。
クラウドネイティブセキュリティプラットフォーム (CNSP) の採用

コンテナ、マイクロサービス、サーバーレスアーキテクチャなど、複雑化するクラウド環境に対応するためには、CNSPによる統合的なセキュリティ管理が不可欠です。
可視性の向上と一貫性のあるポリシー適用
CNSPは、クラウド環境全体を可視化し、セキュリティポリシーを一元的に管理することができます。これにより、コンテナ、マイクロサービス、サーバーレスアーキテクチャなど、様々な環境に対して一貫性のあるセキュリティ対策を適用できます。
自動化された脅威対応
CNSPは、脅威を自動的に検出し、対応することができます。これにより、セキュリティ担当者の負担を軽減し、迅速な脅威対応を実現できます。
DevSecOpsにおけるセキュリティチャンピオン育成
セキュリティは、セキュリティ専門家だけの責任ではありません。開発者自身がセキュリティ意識を高め、責任を分担する文化を醸成することが重要です。
セキュリティトレーニングの実施
開発者向けのセキュリティトレーニングを実施し、セキュリティに関する知識やスキルを向上させましょう。OWASP Top 10などの一般的な脆弱性や、セキュアコーディングのベストプラクティスなどを学ぶことが重要です。
セキュリティチャンピオンの任命
各チームにセキュリティチャンピオンを任命し、セキュリティに関する知識やスキルを共有する役割を担わせましょう。セキュリティチャンピオンは、セキュリティに関する質問に答えたり、セキュリティトレーニングを企画したりすることができます。
セキュリティ文化の醸成
セキュリティに関する情報を共有する場を設けたり、セキュリティに関する成功事例を表彰したりすることで、セキュリティ文化を醸成しましょう。
まとめ
DevSecOpsは、ソフトウェア開発の速度とセキュリティを両立させるための重要なアプローチです。サプライチェーンセキュリティの強化、IaCセキュリティの深化、AI/MLを活用したセキュリティ自動化、CNSPの採用、そしてセキュリティチャンピオンの育成は、日本の開発現場が直面する課題に対応するための重要なトレンドです。これらのトレンドを参考に、自社のDevSecOps戦略を見直し、より安全なソフトウェア開発を実現しましょう。
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